謄本と権利証の違い
不動産登記のご依頼を頂いたお客様に不動産の謄本をご用意くださいとご案内すると、不動産の権利証をお持ちになる方が結構いらっしゃいます。
そこで、今回は謄本と権利証の違いについて解説しようと思います。
司法書士がお客様にご案内するいわゆる謄本は、正式名称「登記事項証明書」という書面のことを指します。
登記事項証明書は、以下のようにA4サイズの紙に土地や建物の所在・面積のほか,所有者の住所・氏名等が記載された書面で、こちらから法務局に請求しなければ発行してもらえません。
ちなみに、この登記事項証明書は、法務局が登記事務をコンピュータで処理するようになってから作成されるようになったものです。
コンピュータ化される前は、不動産の情報は紙媒体で法務局に保管されており、不動産の情報を知りたいときにはその紙をコピーしたもの(登記簿謄本)を交付してもらっていました。
登記事項証明書も登記簿謄本も不動産の情報を記載した書面という点では同じであるため、今でも登記事項証明書のことを単に謄本と言うことが多いです。
これに対して、不動産の権利証というのは、登記済権利証(コンピュータ化前のもの)もしくは登記識別情報通知(コンピュータ化後のもの)のことを指します。
かつてコンピュータ化前の時代においては、不動産を売買や相続等によって取得し、所有権に関する登記が完了すると、登記済権利証という書類が交付されていました。
一般的にはB5サイズのものが多く、冊子状になっており、表紙に「登記済権利証」、「登記済権利証書」、「登記済証書」などの文字が記載されていることが多いです。
そして、登記済権利証の中(ページの後ろの方)には、登記受付日、受付番号、法務局名が入った「登記済」の長方形の印鑑が押されています。
しかし、コンピュータ化後には、この登記済権利証というものは交付されなくなり、代わりに登記識別情報通知という、12桁の暗証番号が記載された書面が不動産の取得者ごとに発行されるようになりました(発行された時期によって若干大きさやレイアウトが異なります)。
登記済権利証と登記識別情報通知はいずれも不動産の売却や担保の設定による登記を申請する際に、本人確認手段として極めて重要な書類となります(紛失した場合には再発行もできません)。
一方で、謄本(登記事項証明書)は、記載内容がすべて法務局のコンピュータに記録されており、手数料さえ支払えば何通でも取得が可能なため、紛失しても特に問題は生じません。
このように、謄本(登記事項証明書)と権利証は全く別の書類であり、その重要性も全く違うため、保管にあたっては注意が必要です。
なお、不動産の謄本(登記事項証明書)がなくても、権利証があればこちらで不動産の情報を調べることはできますが、謄本をお持ち頂いた方が話がスムーズに進むため、ご相談の際には謄本をご準備頂けると助かります。