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増資による資金調達について | 加藤司法書士事務所

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コラム

増資による資金調達について

カテゴリ: 会社・法人関係 公開日:2021年12月14日(火)

増資は金融機関などから受ける融資と並んで株式会社の重要な資金調達手段です。

増資によって得た資金は融資と違って返済の必要がないため、気軽に資金調達ができるのが特徴です。

ここでは、増資の概要や種類、増資による資金調達をすることのメリット・デメリットについて解説します。

 

 

1.増資による資金調達

1-1.増資とは

増資とは、株式会社が株式を発行して自社の資本金の額を増加させることをいいます。

資本金は株式会社の事業資金となる自己資本(会社が自ら調達した資本)のことで、登記事項でもあり、会社のホームページ等で公開しているところも多いため、目にする機会は多いかと思います。

増資は法律上の用語ではなく、会社法上は増資のことを「募集株式の発行」といいます。

なお、自己資本に対して、金融機関からの借り入れなど会社外部から調達した資本のことを「他人資本」といったりもします。

 

1-2.自己株式の処分とはどう違う?

自己株式(自社株)とは、株主が所有している株式の買い戻しや、株主からの買取り請求によって会社自身が保有することになった株式のことをいいます。

この自己株式を再度株主や第三者に対して交付することを自己株式の処分といいます。

 

自己株式の処分は増資と同様の手続きで行い、株式引受人から払い込みを受ける点も同じですが、増資と違って会社の資本金の額が増加しないという特徴があります。

また、増資の場合には、新たに株式を発行するため、会社の発行済株式の総数も増加することになりますが、自己株式の処分の場合には、会社内部に留保されている株式を交付するだけですので、発行済株式の総数に変更は生じません。

 

1-3.新株予約権とはどう違う?

新株予約権は、会社の株式をあらかじめ決められた価格で取得することができる権利です。

会社の役員や従業員のモチベーションアップなどのために、ストックオプションとして利用されることが多いです。

 

新株予約権自体は株式ではないため、新株予約権を発行した時点では資本金の額は増加しませんが、将来新株予約権者(新株予約権を取得した人)が新株予約権を行使して会社が新たに株式を発行した場合には、資本金が増加することになります。

一方、新株予約権が行使されても、会社が新株を発行せずに自己株式を交付した場合には、資本金の額は増加しません。

 

 

2.増資の種類

増資(募集株式の発行)にはいくつかの方法があります。

 

2-1.第三者割当

増資の原則的なパターンであり、特定の第三者に株式を割り当てる方法により増資を行います。

割当て先は株主でも株主以外でも構いません。

また、誰に何株割り当てるかも会社が自由に決めることができます。

 

2-2.株主割当

既存の株主に対して株式を割り当てる方法による増資です。

各株主に割り当てる株式の数は、各株主の持株比率に応じたものでなければならないため、持株比率に関係なく各株主に割り当てをしたいという場合には、第三者割当の方法で行うことになります。

持株比率に応じた割り当てというのが使いづらいことから、株主割当は実務上あまり利用されていません。

 

2-3.公募

特定の人に対してではなく、広く一般的に株式を引き受けてくれる人を募ることを公募といいます。

上場会社の増資やIPO(新規株式公開)などで利用されています。

 

2-4.総数引受契約

一人もしくは複数の引受人が募集株式の総数を引き受けることを会社と契約した場合、募集株式の申込みと割当ての手続きを省略することができます。

これを「総数引受契約」といいます。

既存株主に限らず、特定の人に対して株式を交付する点で第三者割当の一種ですが、第三者割当と異なるところは、株式を引き受ける全員が同一の機会に会社と株式引受契約を締結するという点です。

同一の機会といっても、全員が一同に介して契約を締結しなければならないという訳ではなく、必ずしも1枚の契約書に引受人全員が署名・押印をする必要もありません。

ですので、同一内容の総数引受契約書を使って各引受人と個別に契約をするやり方であっても、総数引受契約として成立します(ただし、同一の機会と評価されるために総数引受契約書に引受人全員の名前を記載するなどの工夫が必要です。)。

 

3.増資による資金調達のメリット・デメリット

資金調達にはいくつかの方法がありますが、増資による資金調達を行うメリット・デメリットは以下のとおりです。

 

3-1.増資によって資金調達をすることのメリット

◎返済の心配をすることなく、資金調達ができる

増資による資金調達は、金融機関などから融資を受ける場合と異なり会社が負債を負うものではありません。

融資の場合だと定期的な返済義務が生じるため、資金繰りの悪化によって返済が遅れたり、返済不能となるなどのリスクがありますが、返済義務がない増資であれば、そのようなリスクの心配をすることなく資金調達が可能です。

 

◎会社の信用度が上がる

資本金の額は、会社の取引や金融機関などからの融資の審査に影響を及ぼします。

一般的に資本金の額が多いほど会社に対する信用度は高くなるため、増資によって資本金の額が増えれば、取引できる相手方が増えたり、融資を受けやすくなるというメリットがあります。

 

3-2.増資によって資金調達をすることのデメリット

◎税制面での不利益

資本金の額を増加することによって、今まで使っていた税制面での優遇措置が使えなくなったり、税額が増えるというデメリットが生じることがあります(法人税、法人住民税、消費税など)。

特に、増資によって資本金の額が1000万円以上となる場合、資本金の額が1億円を超える場合には注意が必要ですので、このような増資をする際は、専門家に事前に相談することをおすすめします。

 

◎株主が増えることにより、手続きが面倒に

増資をする際に新たに株式を引き受けるのが既存の株主以外ということもあります。

そうすると、新たに会社に株主が加わることになり、株主総会の招集などで手間が増えることになります。

また、新たな株主も単独株主権(1株でも持っていれば行使することができる株主の権利)や少数株主権(一定割合の株式を持っていれば行使することができる株主の権利)を取得することになるため、これらの権利が行使される可能性も高くなります。

 

◎既存株主の持株割合(議決権割合)が減少

新たに株式を発行することにより、総株式数(総議決権数)に対する既存株主の持株割合(議決権割合)が減少します。

例えば、発行済株式の総数が100株で、会社の代表取締役A(オーナー)が70株、Bが30株持っている場合、オーナー社長のAは議決権の3分の2以上(70/100)を持っているため、会社経営上の意思決定は基本的にAが単独で行うことができます。

しかし、新たにCに対して株式を20株発行すると、Aの持株割合(議決権割合)は70/120となってしまい3分の2を割ってしまうため、3分の2以上の賛成が必要な事項(いわゆる特別決議事項)については、BとCが反対をすれば否決されることになります。

会社法上の特別決議事項は非常に多いため(定款変更も特別決議事項です。)、オーナー側の単独経営を維持したいのであれば、自身が3分の2以上を確保できるように新株を発行するか、新たに発行する株式を議決権制限株式(種類株式の一種です。)としておく必要があります。

 

 

4.まとめ

増資についてまとめると以下のようになります。

 

◎増資と自己株式の処分との違い

→増資は資本金の額と発行済株式の総数が増加するが、自己株式の処分はどちらも増加しない。

◎増資と新株予約権発行の違い

→増資は株式を発行するもので、新株予約権発行は将来株式を取得できる権利を発行するものである。

◎増資の種類

→第三者割当(総数引受契約)、株主割当、公募がある。

◎増資のメリット

→返済義務のない資金調達、会社の信用度アップ

◎増資のデメリット

→税制面での不利益、手続きの煩雑化、既存株主の持株割合(議決権割合)低下

 

増資や自己株式の処分、新株予約権について詳しく知りたいという方は、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

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