会社代表者(代表取締役や代表社員等)の住所変更登記
会社の代表権を有する者(株式会社の代表取締役や合同会社の代表社員など)については、その氏名(名称)のほかに住所も登記事項となっています。
会社の登記事項に変更があった場合には、2週間以内にその変更の登記を申請しなければならず、代表取締役や代表社員の住所に変更があった場合にも、2週間以内に登記申請が必要となります。
ここでは、代表取締役や代表社員などの住所変更登記について解説します。
1.住所変更登記が必要な場合
会社の謄本を見てみると、代表者以外の役員も登記されていますが、住所が登記事項となっていない役員については、住所変更登記は不要です。
具体的には以下のような場合に住所変更登記が必要になります。
1-1.株式会社の代表取締役・代表執行役・代表清算人の住所変更
株式会社の代表取締役は、その住所及び氏名が登記事項となっているため、代表取締役の住所が引っ越し等によって変更になった場合には、代表取締役の住所変更登記を申請しなければなりません。
また、株式会社が指名委員会等設置会社(改正前の委員会設置会社)である場合には、代表取締役ではなく代表執行役が会社の代表者となりますが、この場合には代表執行役の住所及び氏名が登記事項となるため、代表執行役の住所に変更があった場合には、住所変更登記が必要になります。
株式会社が解散し清算手続をする際には、清算人が就任し、代表清算人が株式会社を代表します。
代表清算人以外の清算人は、その氏名のみが登記事項となっていますが、代表清算人については住所及び氏名が登記事項であるため、代表清算人の住所の変更があった場合には、住所変更登記を行います。
1-2.合同会社の代表社員・清算人の住所変更
合同会社の役員(社員)については、代表社員の住所及び氏名(名称)と、代表社員以外の業務執行社員(株式会社における平取締役のようなもの)の氏名(名称)が登記事項になっています。
また、合同会社の場合には法人が社員となることも可能であり(株式会社の場合には法人は取締役になれません。)、合同会社の代表社員が法人である場合には、代表社員としての職務を行う者(職務執行者)を定め、その者の住所及び氏名を登記しなければなりません。
そのため、代表社員が法人の場合には、その法人自体の住所が変わった場合だけでなく、法人の職務執行者の住所が変わった場合にも住所変更登記を申請する必要があります。
この職務執行者の住所変更登記は特に忘れやすいため、注意が必要です。
合同会社が解散した場合には、株式会社の場合と同様に清算人が清算手続きを行いますが、株式会社の清算人と異なり、代表権の有無にかかわらず、清算人全員について住所が登記されます。
そのため、清算人の住所に変更があった場合には住所変更登記が必要となります。
1-3.有限会社・合名会社・合資会社の場合
特例有限会社(会社法施行後も特例によって旧有限会社のような取扱いを受ける株式会社)の場合には、取締役及び監査役の全員について住所及び氏名が登記事項となっているため、代表取締役以外の役員についても住所変更登記の対象となります。
また、特例有限会社が解散した場合の清算人についても全員の住所が登記されます。
合名会社と合資会社については、社員全員の住所及び氏名(名称)が登記事項となっており、会社を代表しない社員がいる場合には、代表社員の氏名(名称)が追加で登記事項となります。
そのため、社員の住所に変更があった場合には、代表権の有無にかかわらず、住所変更登記が必要になります。
代表社員が法人である場合の職務執行者の住所変更については、合同会社の場合と同じです。
また、合名会社と合資会社が解散した場合の清算人の住所変更登記についても、合同会社の場合と同じです。
2.代表取締役や代表社員等の住所変更登記の方法
代表取締役や代表社員などの住所変更登記は、会社自体の住所変更(本店移転)登記と比べると、非常にシンプルなものです。
2-1.必要書類について
代表取締役や代表社員などの住所変更登記の必要書類は特になく、司法書士に手続きを依頼する際に委任状が必要になるぐらいです。
住所変更を行うのが法人である場合(合同会社の代表社員が法人である場合など)には、昔は法人の登記事項証明書(住所変更の記載があるもの)を添付していましたが、今は当該法人の会社法人等番号を登記申請書に記載しておけば、登記事項証明書の添付は不要となりました。
もっとも、当該法人自体の住所変更(本店移転)登記が完了していることが前提となります。
住所変更をしたのが個人の場合には、住民票等の添付は不要です。
ただ、正確な住所移転日を登記申請書に記載する必要があるため、念のため住民票を取得して移転日を確認することをおすすめします。
2-2.登記申請書の作成の仕方
具体的に住所変更の登記申請書の記載方法をみていきましょう。
以下は株式会社(合同会社)の代表取締役(代表社員)について住所変更があった場合の記載例です。
株式会社(合同会社)変更登記申請書
会社法人等番号 〇〇〇〇- 〇〇- 〇〇〇〇〇〇 フリガナ ○○ 商 号 株式会社(合同会社)〇〇 本 店 〇県〇市〇町〇丁目〇番〇号 登記の事由 代表取締役(代表社員)の住所変更 登記すべき事項 〇〇 登録免許税 金10,000円 添付書類 委任状 1通
上記のとおり登記を申請する。
令和〇年〇月〇日
申請人 〇県 〇市 〇町 〇丁目 〇番 〇号 株式会社〇〇 印 〇県 〇市 〇町 〇丁目 〇番 〇号 代表取締役(代表社員) 〇〇 連絡先の電話番号 〇〇- 〇〇〇〇- 〇〇〇〇
〇〇法務局 〇〇出張所(支局) 御中 |
☆住所変更登記申請書の作成上の注意点
◎登記すべき事項
登記すべき事項の部分には、以下のように新しい住所や移転日などを記載します。
「役員に関する事項」
「資格」代表取締役(代表社員)
「住所」〇県 〇市 〇町 〇丁目 〇番 〇号
「氏名」〇〇
「原因年月日」令和〇年〇月〇日住所移転
◎登録免許税
資本金の額が1億円以下であれば登録免許税額は10,000円となりますが、資本金の額が1億円を超える場合には登録免許税額は30,000円となります。
なお、取締役の就任・退任などの役員変更登記と併せて住所変更登記を行う場合には、役員変更登記と住所変更登記併せて10,000円もしくは30,000円となります。
◎添付書類
司法書士に依頼をする場合には委任状と記載します。
また、住所変更をする代表社員が法人の場合には、次のように当該法人の会社法人等番号を記載します。
「代表社員の登記事項証明書(会社法人等番号 〇〇〇〇- 〇〇- 〇〇〇〇〇〇 )」
◎申請人
申請人の部分の代表取締役(代表社員)の住所は、移転後の新しい住所を記載します。
3.住所が変わったら忘れずに住所変更登記の申請を
会社の代表取締役や代表社員の住所変更登記は、会社自体の本店移転登記や役員変更登記などと違って忘れやすく、古い住所のまま放置されている登記記録をよく見かけます。
しかし、住所変更登記であっても、登記を懈怠すれば、他の登記と同様に過料の対象となります。
株式会社の役員や持分会社の社員の住所が変わった場合には、まずはその役員や社員の住所が登記されているか否かを確認し、登記されている場合には速やかに住所変更登記を申請するようにしましょう。
手早く住所変更の手続きを済ませたいのであれば、司法書士に依頼することをおすすめします。
当事務所では、代表取締役などの住所変更登記を8,000円~(消費税別)で承っております。