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監査役の監査の範囲 | 加藤司法書士事務所

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コラム

監査役の監査の範囲

カテゴリ: 会社・法人関係 公開日:2019年06月20日(木)

監査役は、株式会社において取締役の職務の執行を監査するための機関です。

 

監査役の監査には、業務監査と会計監査の2種類あります。

 

業務監査とは、取締役の職務の執行が法令や定款に違反していないかどうかを監査するものです(業務監査=適法性監査)。取締役の職務の執行が会社の経営方針に則って合理的・経済的に行われているかどうかを監査する妥当性監査も業務監査に含まれるとする考え方もあります(業務監査=適法性監査+妥当性監査)。

 

会計監査とは、毎事業年度の定時株主総会に提出する貸借対照表や損益計算書などの計算書類等を監査するものです。

 

監査役は通常、業務監査権限と会計監査権限の両方を有していますが、定款で定めることにより会計監査権限のみに限定することができます。

 

そして、法改正により、平成27年5月1日からは監査役の監査の範囲を会計監査に限定する旨の定款の定めがある株式会社は、その旨を登記しなければならなくなりました。

もっとも、改正法の施行後最初に監査役が就任し、又は退任するまでの間は登記しなくてもいいという経過措置があるので、必ずしも今すぐに登記しなければならないというものではありません。

 

監査役の監査の範囲を会計監査に限定する旨の定款の定めがある株式会社には、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第87号)第53条の規定によって当該定款の定めがあるものとみなされた会社(実際の定款には当該定めはないにもかかわらず、法律によってあるものとみなされてしまうということです。)も含まれます。

 

この定款の定めがあるものとみなされた会社というのが実務上結構多く、平成18年4月30日以前に設立された中小企業・同族会社は大体これに当てはまります。

 

会計監査に限定する旨の定款の定めがあるものとみなされた会社がとる方法としては次の2つのパターンが考えられます。

 

①みなされた会社のままでいい(監査役の監査の範囲は会計監査のみのままでいい)

 

②あるものとみなされた定款の定めを廃止したい(監査役の監査の範囲を業務監査・会計監査の両方にしたい)

 

①の場合には、監査役の監査の範囲を会計監査に限定する旨を登記することになります。

登記申請自体は、代表者の証明書を添付して申請すればいいだけなので簡単です(役員変更登記と一緒にすれば登録免許税は別途かかりません)。

 

②に関しては、そもそも会計監査に限定する旨の定款の定めなんかないにもかかわらず、あるものとみなされているわけですから、存在しないはずの定款の定めを廃止するというのには違和感を感じます。

かといって定款を何もいじらないままにしておくというのもあれなので、この場合、定款に「当会社の監査役の監査の範囲は、会計に関するものに限定しない。」という条項を加える定款変更をすれば良いと思います。

なお、当該定款変更の効力発生時に現任監査役が任期満了退任してしまうので(会社法336条4項3号)、監査役を再度選任する株主総会決議が必要になります(重任としたい場合には定款変更の効力発生時点を株主総会終結時にするなどの工夫が必要です)。

 

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