清算手続き中の株式会社ができること
株式会社が解散すると、その会社は清算手続きに入ります。
清算手続き中の株式会社(清算株式会社)は、解散前と同じように活動することはできませんが、一定の行為は認められています。
ここでは、清算株式会社ができること・できないことについて解説します。
1.株式会社が解散しても消滅する訳ではない
解散といっても会社が完全に消滅してしまう訳ではなく、その後の清算手続きに必要な範囲で活動をすることができます。
では、株式会社が完全に消滅するのはどのタイミングでしょうか。
株式会社は、解散後の清算手続きが終了し、決算報告書が株主総会で承認された後、清算結了の登記によって完全に閉鎖されることになります。
未払いの債務が残っているなど清算手続きが終了していない状態では、株式会社を閉鎖することはできません。
2.清算株式会社ができること
清算株式会社であっても可能な行為は、以下のとおりです。
◎債権の取り立て・債務の弁済
会社の顧客に対する売掛債権など、まだ支払ってもらっていない債権がある場合には、清算手続き中に債権の取り立てをすることができます。
取り立てる予定がない債権については、これが残ったまま清算結了をすることはできないので、債権の放棄をして、帳簿上の債権をゼロにする必要があります。
また、仕入れ先に対する債務の弁済や、未払いの公租公課の支払いなども、清算手続き中にすべて済ませなければなりません。
◎財産の処分
会社の債務を弁済したり、残余財産の分配を金銭で行うために現金が必要な場合には、会社が所有している不動産その他の財産を売却する必要があります。
このような換価処分行為も清算手続き中に行うことが可能です。
◎資金の調達
清算手続きにあたって資金が必要となる場合には、株式や社債を発行したり、金融機関から借り入れをすることもできます。
◎商号や事業目的の変更
清算手続き中に株式会社の商号(会社名)を変更することは可能です。
また、清算手続きに必要な範囲で事業目的を変更することも可能と考えられています。
◎本店移転、支店設置
清算手続き中であっても株式会社の本店移転をすることができます。
清算株式会社は、営業活動はせず、会社の閉鎖に向けて活動をするだけなので、広いオフィススペースは必要ありません。
そのため、本社オフィスの規模を縮小するために引っ越すということはまれにあります。
また、株式会社の支店を廃止したり、支店を移転するだけでなく、新たに支店を設置することも禁止されていません。
◎自己株式の取得(無償)
自己株式の取得とは、株式会社が発行している株式を自社で取得することをいいますが、清算株式会社が発行する株式を「無償で」株主から譲り受けることは可能です。
◎清算株式会社が消滅会社となる合併等
清算株式会社が消滅会社(吸収される側)となる吸収合併や、清算株式会社が分割会社(事業を手放す側)となる吸収分割は可能です。
また、清算株式会社は、新設合併や新設分割により、新たに会社を設立することもできます。
◎現務の結了
現務の結了とは、取引先との契約関係を解消したり、従業員との雇用契約を解消したりといった、会社の業務活動を終了するための行為のことです。
◎残余財産の分配
会社の債権者への弁済や未払いの公租公課等の支払いが完了してなお会社に財産が残っている場合には、株主に対して「残余財産の分配」という形で分配されます。
3.清算株式会社ができないこと
清算株式会社がすることができない行為は、以下のとおりです。
◎営業活動
清算株式会社は、会社を清算して閉鎖することが目的ですので、新たな顧客を増やしたり、既存の顧客と新たに取引をするなど、営業活動をすることはできません。
なお、会社解散前に既に取引が完了しており、取引先との債権・債務関係が残っているだけでしたら、その債権の取り立てや債務の弁済をすることは可能です。
◎剰余金の配当
剰余金の配当とは、株式会社の活動によって生じた利益を株主に対して分配することですが、清算手続きでは、会社債権者に対する債務の弁済や公租公課の支払いが優先され、それでも余った財産については「残余財産の分配」という形で株主に分配されます。
そのため、清算手続き中に「剰余金の配当」という形で株主に利益の分配をすることはできません。
◎減資(資本金の額の減少)
清算株式会社は、増資(新株発行)によって資本金の額を増加させることは可能ですが、逆に減資(資本金の額の減少)をすることはできません。
◎自己株式の取得(有償)
清算株式会社が自己株式を株主から有償で取得することは、会社財産の流出を招くことになるため、一定の場合を除いて禁止されています。
◎清算株式会社が存続会社となる合併等
清算株式会社が存続会社(吸収する側)となる吸収合併、清算株式会社が承継会社(事業を承継する側)となる吸収分割は禁止されています。
また、株式交換や株式移転、株式交付(※)についても清算株式会社は行うことができません。
※株式交付は会社法改正によって令和3年3月1日から可能になった手続きで、他の株式会社の株式を取得して、その会社を子会社化するものです(株式交換のように子会社化する株式会社の株式をすべて取得する必要はありません。)。その際対価として自社の株式を交付するため、株式交付と呼ばれています。
4.株式会社の解散・清算手続きは司法書士にご相談ください
株式会社の清算手続きは会社法その他の法令に基づいて進めていかなければならず、手続きに不備や漏れがあると清算結了ができないため、注意が必要です。
無理に自分たちだけで進めようとせず、会社法のプロである司法書士にご相談ください。