相続登記の必要書類
相続登記(相続による不動産の名義変更)の必要書類は法務局のホームページでも確認できますが、遺言書や遺産分割協議の有無、相続人が誰かによって変わってくるため、若干分かりづらい面があります。
それぞれの場合に分けて、相続登記の必要書類を説明していきます。
まずは、相続登記でよく使用する一般的な書類を以下に挙げていきます。
① 被相続人(亡くなった方)の死亡の記載がある戸籍
被相続人が亡くなった時の本籍地で取得できる最新の戸籍です。
死亡の記載がある戸籍の取得には、死亡届を提出してから数日~1週間程かかるので注意が必要です。
② 被相続人の出生からの連続した戸籍(①を除く)
①で取得した戸籍から被相続人の出生までさかのぼっていく形で取得していきます。
除籍謄本・改製原戸籍などと言われるものです。
被相続人が転籍や婚姻・離婚・養子縁組などで本籍を転々としている場合には、集めるのが非常に大変になることがあります。
また、相続登記に限って言えば、厳密には出生からのものでなく、12~13歳頃からの戸籍で足りますが、集めた戸籍は相続登記以外の手続き(銀行・証券会社での手続きなど)でも使うことがあるため、出生時からのものを揃えておいた方が無難かと思います(なお、法定相続情報証明制度においては、出生時からの戸籍が要求されます。)。
③ 被相続人の最後の住所と不動産の登記記録上の住所との繋がりを証明する書類
一般的には被相続人の住民票の除票や戸籍の附票が当てはまりますが、それだけで繋がりが取れない場合には、不動産の権利証(登記済権利証もしくは登記識別情報通知)が別途必要になることもあります。
なお、不動産の権利証が紛失等により提出できない場合には、管轄の法務局に相談の上、その他の書類を用意することになります。
④ 相続人の最新の戸籍謄本
被相続人が亡くなった日付より後の日付で取得したものが必要となりますので、古いものは使えません。
⑤ 相続人の住民票
④と異なり、被相続人の死亡前に取得したものでも構いません。
⑥ 不動産の評価額が記載された書類
具体的には固定資産評価(公課)証明書や固定資産税納税通知書などが当てはまります。
⑦ 遺産分割協議書+押印者の印鑑証明書
相続人のうちの一部の人に不動産を相続させる場合や、法定相続分(民法で定められた持分割合)とは異なる割合で相続人の共有にしたい場合には、遺産分割協議書が必要になります。
また、遺産分割協議書への押印は原則実印であるため、押印者全員の印鑑証明書も併せて用意しておきましょう。
⑧ 遺言書+検認済証明書(自筆証書遺言の場合)
遺言書に不動産についての記載があり、それが法定相続分(民法で定められた持分割合)での相続と異なる内容である場合には、遺言書が添付書類となります。
公証役場で作成した公正証書遺言の場合には、公証役場から受け取った遺言書の正本もしくは謄本で足りますが、被相続人が自筆で作成した自筆証書遺言の場合には、遺言書に加えて家庭裁判所による検認を受けたことを証明する書類(検認済証明書)が必要です。
次にそれぞれの場合で必要となる書類を見ていきましょう。
◎遺言書がなく、法定相続分(民法で定められた持分割合)で相続する場合
例えば、相続人が配偶者と子2人で、それぞれ配偶者が4分の2、子が4分の1ずつで不動産を共同相続するといったように、法定相続分で相続するときの必要書類は
① 被相続人(亡くなった方)の死亡の記載がある戸籍
② 被相続人の出生からの連続した戸籍(①を除く)
③ 被相続人の最後の住所と不動産の登記記録上の住所との繋がりを証明する書類
④ 相続人の最新の戸籍謄本
⑤ 相続人の住民票
⑥ 不動産の評価額が記載された書類
となります。
なお、相続人が1人の場合で、その相続人が単独で相続する場合もこれに当てはまります。
◎遺言書がなく、相続人間で遺産分割協議をする場合
例えば、遺産分割協議書をして相続人のうちの1人に不動産を相続させる場合の必要書類は
① 被相続人(亡くなった方)の死亡の記載がある戸籍
② 被相続人の出生からの連続した戸籍(①を除く)
③ 被相続人の最後の住所と不動産の登記記録上の住所との繋がりを証明する書類
④ 相続人の最新の戸籍謄本
⑤ 相続人の住民票(ただし、不動産を取得する相続人のみ)
⑥ 不動産の評価額が記載された書類
⑦ 遺産分割協議書+押印者の印鑑証明書
となります。
⑤については、不動産を取得しない相続人の住民票は不要です。
◎遺言書があり、その内容にしたがって相続する場合
例えば、遺言書に「遺言者が所有する下記の不動産は、遺言者の長男である○○に相続させる。」といった内容がある場合の必要書類は
① 被相続人(亡くなった方)の死亡の記載がある戸籍
③ 被相続人の最後の住所と不動産の登記記録上の住所との繋がりを証明する書類
④ 相続人の最新の戸籍謄本(ただし、不動産を取得する相続人のみ)
⑤ 相続人の住民票(ただし、不動産を取得する相続人のみ)
⑥ 不動産の評価額が記載された書類
⑧ 遺言書+検認済証明書(自筆証書遺言の場合)
となります。
②の書類を取得する必要がなく、④⑤も不動産取得者のものだけでよいため、必要書類集めは比較的楽かと思います。
ただし、遺言書の文言が上記のような「~に相続させる」といったものではなく、「~に遺贈する」となっている場合には、必要書類が異なってくることがあるため、注意が必要です。
※その他特殊な事情により別途必要となる書類
◎相続人が兄弟姉妹である場合
・被相続人の父母の出生から死亡までの連続した戸籍
・兄弟姉妹の一部が既に亡くなっているときは、その兄弟姉妹の出生から死亡までの連続した戸籍
被相続人の年齢によっては、さらに被相続人の祖父母の戸籍が必要になることがあります。
◎相続人の一部が相続放棄をしている場合
・相続放棄申述受理通知書
相続放棄申述受理通知書とは別に、相続放棄申述受理「証明書」という書類がありますが、相続登記においてはどちらの書類でも構いません。
※必要書類ではないが、任意で提出することができる書類
・相続関係説明図
相続登記が完了した後に法務局に提出した戸籍一式を返却してもらうためのものですが、戸籍一式の返却が不要であれば提出しなくても構いませんし、相続関係説明図を提出しなくても戸籍のコピーを併せて提出すれば原本の返却を受けることができるため、任意の書類となります。
・法定相続情報一覧図の写し
平成29年5月から運用が開始されたものですが、これを提出すれば①②④(法定相続情報一覧図の写しに相続人の住所の記載があれば⑤も)の書類が添付不要となるため大変便利な書類です。